Interview

これはBanksyじゃない。けど無視できない。【後編】Not Banksyとバンクシーの距離

これはBanksyじゃない。けど無視できない。【後編】Not Banksyとバンクシーの距離

text: BEHIND 編集部


ストリートアートの世界で、常に話題の中心にいるBanksy(バンクシー)。

その“影”を借りて生まれたようで、実はまったく別の思想を持った存在──、それがNot Banksyだ。

 

 

名前からしてすでに挑発的。

ジョークから始まった彼らのプロジェクトは、現代アートのヒエラルキーや消費される反体制アートへの痛烈な皮肉とユーモアに満ちている。

 

「Not Banksyの正体」とは?

そして、バンクシーとの距離感は?

 

前編・後編の2回にわたってお届けするロング・インタビュー、後編はプロジェクトの成り立ちと、バンクシーとの関係性に迫る。

 

Q6.なぜバンクシーと関わるようになり、そしてNOT BANKSYとして活動を始めたのですか?
「Not Banksy」というプロジェクトは、もともとはちょっとした冗談から始まったんだ。2007年頃には、バンクシーの名前はもうすっかり有名になっていて、誰も彼もがグラフィティやアーバンアートに夢中になってた。同時に、彼の作品の値段がどんどん高騰していって、それに伴ってアートの“民主化”とは真逆の、薄っぺらさや欲深さを招く結果となってしまったんだ。バンクシー自身はそうした状況の中でも、自分の信念や社会的・政治的なメッセージ性をしっかり守っていたと思うし、それはとても素晴らしいことだと思った。

でも、それに群がった一部のディーラーやコレクターたちの貪欲さや愚かさは、見るに堪えないものだったよ。だから僕たちは、そういう連中や、バンクシーを取り巻くメディアの騒ぎをちょっと茶化していたんだと思う。もちろん、自分たち自身が面白がって遊んでた部分も大きい。カルチャーの中で一瞬にして“アイコン”となった存在をひっくり返してみる──、そんなアイデアに惹かれたんだ。アイコンを壊すこと(偶像破壊主義)って、昔からずっと僕にとって魅力的なことだったからね。
Q7.バンクシーはNOT BANKSYの存在を認識していますか?
いや…少なくとも「公式には」認めてないよね。彼がそんなことをするなんて馬鹿げている。彼が僕たちのやってることを気に入ってくれてるんじゃないかって、勝手に思ってるけど、正直ちょっとイラっとしてる部分もあるんじゃないかな。実際のところ、どれだけ「これはバンクシーじゃない」って明言しても、「裏で本人がやってるんじゃないか?」って言い張る人たちは常にいた。でも、それすらも僕たちの“主張”の一部になっていったんだ。僕たちは自分たちの作品の方が、バンクシーのよりイケてると思ってたんだよ…値段はその何百分の一だけどね!
Q8.なぜ今もNOT BANKSYとして活動を続けているのですか?
実は、いつもやめようと思ってるんだ。2009年から2018年までの10年間は、実際に完全に活動を止めてた。ちょっと飽きてきたのと、当時は「Harry Adams」としての絵画制作のほうに興味が移ってたからね。

でもあるとき、「Not Banksy」の偽物がオークションに出回り始めてるのを見つけて──それがもう、皮肉というか、滑稽すぎてさ。だったらいっそのこと、こっちから“フェイクのフェイク”を作って対抗してやろうと思ったんだよね。

その頃からシルクスクリーンの制作にも本格的に関わるようになって、どんどん新しいアイデアも湧いてきた。ただ、さすがに時間を取られすぎてしまったから、今はまた半分引退みたいな状態に戻ってる。でも、もしまた本当に面白いアイデアが浮かんだら、復活するかもしれないね。
Q9.今後バンクシーとNOT BANKSYが交流することはあると思いますか?
それはまずあり得ないと思うけど、もしバンクシーが僕たちと一緒にNot Banksyを作るなんてことがあったら、あの混乱と既成概念の覆しがすごく面白そうだなとも思う。

でもそうなると、それはもう本当の意味でのNot Banksyじゃなくなっちゃうし、正直自分がどう感じるかはちょっとわからないね!
Q10.NOT BANKSYの未来について教えてください。
未来なんて大げさに言い過ぎだよ。あるいは、Not Banksyにとっての未来はむしろ過去の中にあるんだ。

僕は、これまでの活動の遺産が、Not Banksy ネオ無思想主義的反アーティストの弟子たちにカルト的に支持されることを願っている。そして『The Not Banksy Book: Lying, Cheating, Stealing & the Death of Art Vol.13』が、世界中で反逆の精神のバイブルとして崇拝される日が来るかもしれないね。