Interview

音楽の話。#1「片寄明人さんへ11個の質問」

音楽の話。#1「片寄明人さんへ11個の質問」

text: BEHIND 編集部


皆さん、こんにちは!こちら、編集部です。

3ピースロックバンド「GREAT3」のボーカル&ギターとして活動する傍ら、音楽プロデューサーやCMナレーション、DJなど、多岐にわたって活躍されている片寄明人さんに11個の質問をさせていただきました!

Q1.音楽を始めたきっかけは何でしょうか?どのような音楽に影響を受けましたか?
幼少期からリスナーとして音楽に夢中で、小学校高学年から洋楽を聴き始めました。趣味の合う仲間こそいましたが、バンドを組むには至らず、自分で音楽をはじめたのは二十歳を過ぎてからでした。ライブハウスで知り合った友人に誘われたのがきっかけで、とあるバンドにギターで参加したのが最初です。そのバンドにはキーボードに高木壮太氏、ドラムに柴田一郎氏(ゆらゆら帝国)などがいたのですが、自分はテクニック不足で即クビになり、その後、Hicksvilleの木暮晋也氏と出会い、意気投合してデュオを組んだところから、のちにデビューしたRotten Hatsがはじまりました。最初はアコースティック・デュオだったので、ギター1本でもR&Bやジャズに通ずる美しく複雑な響きを表現したアメリカのシンガーソングライター:ジェームス・テイラーに大きな影響を受けました。
Q2.片寄さんが考える「良い音楽」とは、どのような音楽ですか?
自分にとっての「良い音楽」とは、人間の複雑な感情を封じ込めたように感じられる作品です。美しくて恐ろしいルー・リード「ベルリン」、優しくて哀しいザ・ビーチ・ボーイズ「ペット・サウンズ」などが思い浮かびます。
Q3.音楽活動をする上で、壁にぶつかった経験はありますか?そして、どのように乗り越えましたか?
曲を書いて歌いはじめたとき、これまで聴いてきた古今東西の素晴らしいミュージシャンと比べ、あまりにも己の才能が未熟で遠く及ばない現実に打ちのめされました。でもそこで諦めず、若さゆえの根拠なき自信だけを頼りに音楽を続けたことが、今に繋がっていると思います。
Q4.音楽プロデューサーのお仕事はどんなお仕事ですか?
僕のプロデュースは自分の色に染めるよりも、その人、そのバンドにとって一番のファンになった気持ちで、最高の楽曲、最高のプレイを引き出すことを一番に考えています。アーティストは自信と不安を同時に抱えているものなので、常に励ましながら、その人の才能がきらめく最良の瞬間を逃さず掴んであげたいと思っています。
Q5.プロデューサーの仕事として、これまでで一番印象深い作品(アーティスト)について教えてください。
一緒にレコーディングしたアーティストはすべて印象深いのですが、やはりプロデューサーとして初のアルバム全曲を手がけたフジファブリック、2004年のメジャーデビュー・アルバム「フジファブリック」は強く心に焼きついています。若くしてこの世を旅立ってしまった志村正彦くんの唯一無二の才能、そしてそれを支えたメンバーたちの短期間での成長、また自分自身も試行錯誤しながらプロデュース・ワークを学び、最後はロンドンのアビー・ロード・スタジオで、ザ・ビートルズのマスタリング・エンジニアと共にアルバムを仕上げられた、忘れることのできないレコーディングです。
Q6.結成30年以上経つGREAT3は、片寄さんにとってどのような存在ですか?
自分のバンドであって、自分自身のものではない、不思議な存在です。GREAT3として3人が揃った時にしかできない音楽、出せない雰囲気が確実にあります。決して僕がコントロールすることはできない、GREAT3という別人格があるように感じています。
Q7.活動休止後、ここ数年では主にライブ活動を行っていますが、それはどういった心境でしょうか?
2017年に子供が生まれる前あたりから約7年間ライブ活動を休みました。もうこのまま再開することなく、自分の音楽は辞めてしまおうと考えたこともありました。しかし2023年にGREAT3の白根賢一が彼の誕生日にライブハウスでイベントをやるから久しぶりに一緒にやらないか?と誘ってくれて、僕もなぜか気軽に引き受けてしまったんです。そのチケットが秒速でソールドアウトしたと聞いて、はじめてGREAT3を待ってくれている人がたくさんいたんだと知りました。

その時のライブで、過去の曲を新たな感覚、新たな解釈で演奏できると分かったこと、そしてGREAT3を愛してくれる人たちの想いに応えたいという気持ちが生まれて、特に先の予定は決めずにライブを再開しました。それ以来、年に3〜4回のライブを続けています。年齢的にいつ突然に終わりが来るかもわからない、だから毎回これが最後という気持ちで挑んでいます。
Q8. 「愛の関係」以降、シングル・アルバムの発表はありませんが、新曲...期待していいんですよね?
自分が納得できるGREAT3の新曲を書けるのか!?その不安はあります。12月にデビュー30周年を記念するライブが渋谷クアトロであるので、そこで新曲を披露すべく挑戦したいと思っています。
Q9.GREAT3の音楽制作において、最も大切にしていることは何ですか?
自分自身が心から感動して、魂が震えるような作品を作りたいという志。
Q10.最近注目しているアーティストや音楽トレンドがあれば教えてください。
Yves Jarvisの新作「All Cylinders」が大好きです。まるでプリンスとピート・タウンゼントが癒合してサイケデリック・ミュージックを奏でたかのような魅力を感じます。
Q11.「BEHIND mag」は、映画やアートなどのカルチャーを掘り下げる媒体で、90年代の雑誌全盛期の頃、GREAT3としても度々取り上げられていたことを記憶していますが、音楽とそれらのカルチャーの繋がりについて、どのような考えをお持ちですか?
音楽をハブとして、ファッション、映画、文学、アートと様々なカルチャーから刺激を受けながら成長してきた自覚があるので、やはり音楽にはそうした好奇心をかき立てる存在であって欲しいという思いがあります。総合芸術を表現しているようなアーティストが理想です。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
日々の生活、そして心を豊潤に保つために、様々なカルチャーは欠かせないと信じています。読者の皆様に「BEHIND mag」で良き出会いがありますように。

片寄さん、お忙しい中お答えいただき誠にありがとうございました!

 

PROFILE

片寄明人 / AKITO KATAYOSE
https://about.me/akitokatayose

GREAT3のボーカル&ギターとして、その高い音楽性と個性で日本の音楽シーンに確固たる地位を築いている。妻であるショコラとのデュオ、Chocolat & Akitoとしても活動。最新作はトロ・イ・モアやトミー・ゲレロとの共演で知られるカリフォルニアの双子デュオ The Mattson 2と制作した「Chocolat & Akito meets The Mattson 2」。

また音楽プロデューサーとして、TENDOUJI、SHE IS SUMMER、DAOKO、木村カエラ、花澤香菜、ははの気まぐれ、YeYe、フジファブリック、GO!GO!7188、、など数多くのミュージシャンの作品も制作。8歳の息子と家族3人でお届けするラジオ番組、京都α-station”Everyday Story”も8年目を迎えて絶賛放送中。

https://fm-kyoto.jp/information/info-56110/